「くらしの足をみんなで考える全国フォーラム2014」

3回目となった今年の「くらしの足をみんなで考える全国フォーラム2014」は、東京・東洋大学で開催され、全国から多くの方にご参加いただいて、無事終了することができました。

2014年11月8日(土)、9日(日)の2日にわたって、「くらしの足をみんなで考える全国フォーラム 2014」(主催:くらしの足をみんなで考える全国フォーラム実行委員会)を開催しました(於:東洋大学白山キャンパス1号館(東京都文京区白山5-28-20))。

全国から「移動の問題」を抱える当事者、行政・社協職員、学識研究者、NPO関係者、福祉・介護・医療の従事者、研究者、バス・タクシー事業者等、約270名が集まり、いのちを守る通院や買い物における困難について本音で語り合った2日間。
年々深刻になる少子高齢化のなかで移動の手段をもたない人々が増加している「現実」─その解決策を模索する場への関心の高さに、参加者が共に育てゆく「連携」の息吹きを感じました。また、参加者は昨年の「全国フォーラム2013」参加者数214名を上回り、実行委員会は確かな手ごたえを得ました。

「くらしの足」を考える人・つくる人・利用する人・利用したいが、困難な人。
地域や立場を軽々と超えて、出会い、話し合い、ヒントを得る参加者の姿には地域のくらし/公共交通への「なんとかしたい」という想いがあふれていました。
今回、参加者一人ひとりの想いとともに持ち帰られた解決へのヒントと「気づき」は、全国でさらなる実践と多様な連携につながっていくことでしょう。
多くの皆様にご参加・ご協力いただき、本当にありがとうございました。

「くらしの足をみんなで考える全国フォーラム2014」について

地域での移動の足の確保について問題意識をもち、解決したいと考えていた有志が集まり、「情報共有」と「意見交換」ができる場づくりを目的として始まった本フォーラム。2012年よりスタートし、2013年からは実行委員会形式で運営を行なって、ポスターセッションを実施することになりました。
2014年で3回目の開催となる本フォーラムでは、①セミナー ②ワークショップ ③基調講演 ④ラウンドテーブル ⑤ポスターセッション ⑥交流会 というプログラムを組み、関心をおもちの方々が参加しやすく、交流しやすい工夫をしました。

今年の特徴はなんといっても、開催期間が1日から2日間に拡大したこと。まず1日目に、国の交通政策基本法や地域公共交通活性化再生法などの枠組みの中で、それぞれの地域に合った取り組みをしていただくために、加藤 博和副実行委員長(名古屋大学大学院環境学研究科准教授)による講義と参加型のワークショップをもうけました。つづく2日目は、基調講演、ポスターセッションのほかに新たにラウンドテーブルを実施しました。
さらに、1日のみの参加が可能なため、特に聞きたいこと・見たいこと・知りたいこと・会いたい人に出会う機会をもちやすいことも大きな特徴となりました。

ラウンドテーブル

今年度の新企画として行なったラウンドテーブル。4つのテーマに分かれて、各部屋で事例紹介、質疑応答が交わされた。
「登壇者を核として参加者が意見を投げ合う」かたちでの意見交換だったが、参加者は1テーマのみならず、関心あるテーマの部屋へ自由に行き来できるため、「知りたいこと」をより多く得る機会が生まれた。

テーマ

1)「くらしの足を守る」人をどう育てるか :事業の担い手や行政担当者を、地域でどう育て、確保するか

座長:大井 尚司氏(大分大学経済学部准教授)
・江田 直也氏(埼玉県三芳町政策推進室)
・権藤 隆治氏(久留米市都市建設部交通政策課)
・中村 太郎氏(田川市産業振興部 商工観光課)
・新井 啓明氏(小平市都市開発部公共交通担当)
・渡邉 嘉之氏(新潟県長岡市総務部)
・岩村 龍一氏(コミュニティタクシー(株)取締役会長)
・福本 雅之氏(公益財団法人豊田都市交通研究所)
・武本 英之氏((株)東京交通新聞社)

電車、バス、タクシー、自家用有償の担い手や、行政の専門担当者を、それぞれの業界や組織が、今後どのように育てていくのか。「くらしの足を守る」人の育て方を議論した。

2) デマンド交通の将来を問う:システム、公共交通計画、事業・実務をどう連携させるのか

座長:吉田 樹氏(福島大学経済経営学類准教授)
・大平 勲氏(新潟県三条市市民部)
・佐藤 洋氏(下野新聞社社会部)
・吉富 広三氏((株)順風路)
・金子 理惠子氏(秩父丸通タクシー(株)社長)

過疎地や都市部の交通空白地域に対して「デマンド交通」をどう使えば良いのか? システム、公共交通計画、事業・実務をどう連携させれば良いのか? 「システム開発」「公共交通計画」「事業・実務」の間で捉え方が異なる「デマンド交通」について意見交換した。


3) 交通弱者の外出支援は誰が担うのか :厚労省の総合事業からUDタクシーまで、これからの担い手は

座長:鎌田 実氏(東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)
・高橋 良至氏(東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科教授)
・河崎 民子氏(NPO法人全国移動サービスネットワーク 副理事長)
・及川 孝氏(全国子育てタクシー協会 会長/(有)フタバタクシー 代表取締役)
・関 進氏(川崎タクシー(株)代表取締役/ 神奈川県タクシー協会)
・横山 和廣氏(NPO法人移動ネットおかやま 理事長)
・石井 信治氏(神奈川県大和市街づくり総務課街づくり調査担当係長)
・谷口 幸生氏(社会福祉法人幹福祉会ヘルプ協会たちかわ 所長)

福祉も交通も、制度・施策は国から自治体へ、地域へと移行されつつある。その中で、厚労省の総合事業からUDタクシーまで、これからの担い手は誰か? 福祉タクシー、介護タクシー、NPOの移動サービスとの役割の違いをどう活かすのか、多様なニーズに対応する担い手のあり方と、それを支える制度や施策をどう整備していくべきかを議論した。
 

4) 公共交通事業の経営はどうする:経営者・行政担当者・住民・関係者が本音で意見交換する

座長:宮崎 耕輔氏(香川高等専門学校准教授)
・加藤 博和氏(名古屋大学大学院環境学研究科准教授)
・鏑木 孝昭氏(横浜市交通まちづくり協議会)
・松浦 秀則氏(あおい交通(株)代表取締役)
・嶌田 紀之氏(南房総市役所企画部企画政策課)
・中尾 正俊氏(一般財団法人地域公共交通総合研究所)

電車、バス、タクシー、自家用有償運送の経営者は事業を継続できるのか、その財源はどう確保するのか? 事業の責任は誰が負うのか? など「公共交通事業の経営」について、経営者・行政担当者・住民・関係者が本音で意見交換した。

まとめ・閉会

■「ラウンドテーブル」座長報告

ラウンドテーブル終了後、再び会場を移動して、4つのテーマの座長が一堂に会し、それぞれの話し合いについて報告した。
「時間が足りなかった」「話し合いが白熱して、一般参加者のご質問を受ける時間を逸した」という声が多いなか、テーマごとの「キーワード」が出された。







清水弘子 監事
(司会:NPO法人かながわ福祉移動サービスネットワーク)

1)「くらしの足を守る」人をどう育てるか :事業の担い手や行政担当者を、地域でどう育て、確保するか
座長:大井 尚司氏(大分大学経済学部准教授)


「複眼的なかまえを持つこと」「考える場・継続の仕組みをどう作るか?」
「くらしの足を守る」人の育て方について話し合いがもたれたが、誰がなにをどうするのか? キーワードは「他者の眼・複眼」。他には、楽しむ・ターゲットをしぼる・「えん」・複眼思考を持つ、という言葉も出た。「横のつながりをつくるのが難しい」という声があるが、だからこそ、異業種、他サービスの経験値は重要である。すべての立場が複眼の眼をもつことが大切である、と報告された。

2) デマンド交通の将来を問う:システム、公共交通計画、事業・実務をどう連携させるのか
座長:吉田 樹氏(福島大学経済経営学類准教授)


「デマンド交通は救世主か?」「デマンド交通の導入が『目的』としてとらえられている?」
デマンド交通をどうとらえるべきか? デマンド交通は急速に増えているが、生活と交流を支えるための場づくりが重要である。また、論点として「『まちづくり』の連携という視点でデマンド交通をとらえること」「ネットワークの適材適所」があった。公共交通の「システム」をニーズととらえる道具として活用する事例もあり、交通事業者や行政の活用法と異なるのでは? と報告があった。

3) 交通弱者の外出支援は誰が担うのか :厚労省の総合事業からUDタクシーまで、これからの担い手は
座長:鎌田 実氏(東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)


「“交通”だけでは限界?」「多様な取り組みの組み合わをめざす」
「誰が担うのか?」を探るために、さまざまな取り組みをご紹介いただいた。タクシーは「ドアtoドア」から「ベッドtoベッド」の段階であることや、UDタクシーの乗り場について、地域で担う移動サービスについて等、多様な取り組みが発表された。需要に対応するサービスの提供者を担う難しさも発表されたが、大和市の事例紹介に新しいかたちを見出した。福祉・交通が制度によって国から自治体・地域に移行しつつあるが、交通だけの問題解決ではなく、まちづくりそのものに発想の転換が必要である、と報告された。

4) 公共交通事業の経営はどうする:経営者・行政担当者・住民・関係者が本音で意見交換する
座長:宮崎 耕輔氏(香川高等専門学校准教授)


「事業者単体という意識では経営(黒字化)は難しい」「30年間需要減─成功体験がない」
昨今、公共交通事業は成り立ちにくくなっているが、いま問題なのは「成功体験」がなくなって久しいこと。失敗ばかりなので、本当は新しいことをすべき時期だが気持ちが向いていない。いま必要なのは成功体験であり、「NEW」を多く取り入れること。新しい取り組みを成功体験に結び付けるべく、たとえば補助金を投資と考えて、投資に値すること(利用者が喜ぶサービス)にあてていく。ポイントは「前向きに新しいものをつくっていくこと」と、報告があった。

■全体のまとめ

加藤 博和氏(名古屋大学大学院環境学研究科准教授)


4名の座長から「ラウンドテーブル報告」の後、加藤 博和副実行委員長より2日間の総括がされた。
「公共交通や移動の確保は、ここ何十年もマイナス思考、負のスパイラルである。しかし本フォーラムに来ていただいている皆様は、なんとかしなくてはいけない! というお気持ちでいらっしゃる。その想いを現実にするには、世の中をおおっているマイナス回転をプラス回転にすることである。そこにはやりがいや成功体験が重要で、『成果の見える化』が必要だ。成功を勝ち取るには目的と方法が重要だが、ポスターセッションなどを通してさまざまな事例が参考になったなら幸い」と発言。また、1日目のセミナーで紹介された「5つの鉄則」をあげ、①目的の明確化 ②適材適所 ③一所懸命 ④組織化 ⑤カイゼン のステップを踏むことがプラス回転につながると述べた。

さらに「2日間の勉強を、ぜひ今日から自分のものにしていただき、来年の本フォーラムのポスターセッションで発信していただきたい。来年、この場で『この1年、自分が何をやれたか』を報告していただければ」と提案、次回のフォーラム会場での再会を誓った。

■閉会の挨拶

閉会の辞として、本フォーラムの会場をご提供くださった東洋大学・岡村 敏之氏(東洋大学国際地域学部国際地域学科教授)が「実行委員会から『考えることができる会場を』という希望を受けていた。至らない点もあったと思うが、『この会場はいいな』と思われたなら、またこのようなイベントをやらせていただきたい」と挨拶。来年度の開催に向けて大きな一歩となる言葉で、2日間の「くらしの足をみんなで考える全国フォーラム 2014」は幕を閉じた。

◆第2日目:参加者の声
・大井先生と阿部さんのやりとりをもっとじっくり聞きたかったです。このフォーラムは公共交通の専門家だけでなくNPOやタクシー、福祉輸送の方々など他分野の方々の話が聴けるので良い機会だと思います。
・ポスターセッションは事例紹介が多くなれば良かったと思います。
・ラウンドテーブルは1グループの人数が多く、参加者の意見が出し難かったのではないかと感じました。(もっとグループを増やしても良いのではないでしょうか?)
・地域それぞれの課題を解決し、順調に運営等をされていること等をもっと紹介していただければと思います。

アンケートから

◆全体を通して

・公式会議では出ない「本音」のぶつかり合いで腹を割って話せた。
・市民フォーラムとして上質。回を重ねてレベルが上がってきている。
・国交省、地方公共団体、交通事業者、利用者団体、学識経験者などが一同に集まる場は他に例がなく、来年も参加したいです。
・講演内容がとても参考となるものが多く、今後の業務に役立つものであった。将来を見据えた交通政策について考える機会になるとともに、ステークホルダー(利害関係者)の役割分担について知ることができた。
・くらしの足を事業者として考えるだけでなく、行政や研究者の方々を交えて意見交換を含め考える機会をいただき、誠にありがとうございました。事業者としての大きな課題は事業の経営安定化が欠かせません。人材の確保も大きな課題です。しかしながら「地域のために」という思いを一層強く思いました。
・移動サービスを未来のライフスタイルから見たとき、何が求められるのか、という将来の形と現在のギャップを考え、それをどう埋めていくのかという議論もあっていいのでは?
・(11月8日セミナー)加藤先生、「プロ向き」とのお話どおり、現場にも近い話で、「一般的なセミナー」より大幅に踏み込んだお話で、とても面白くためになりました。本フォーラムの「志」と実行態勢の賜物だと感じます。ありがとうございました。

◆次回のフォーラムについて

・ワークでもなんでも良いので、参加者同士で話し合える場面がもう少し時間があると良いなと思いました。
・少しだけ関心のある層を取り込めるように、オープニングのみ無料で講演を聞くスタイルを取り入れても良いかも。
・講演での先進地事例を実際に見てみたい。体験してみたいと思ったことから交通先進地ツアーなどがあると良い。先進事例となるにはそれぞれキーマンがいるので(その方に)お会いしたい。
・現地でのフィールドワーク(解説付き)が(準備が大変だと思いますが)あれば、さらに参考になります。⇒個人で見学に行っても、担当者・地域が込めた思いまではなかなかわからないので。
・東京開催ではなく、地方開催(分科会でも良い)があっても良いと思う。
・自治体(県、市町)、国(運輸局、支局)、事業者(バス、タクシー)の参加者が多数になるようなPRの仕方をお願いします。東京だけではなかなか地方の参加者が増えない。大変なのはわかるが、せめて全国数ブロックでの開催を考えていただきたい。
・もっと全員で討議できるような形が良いですね。会場はどこか見学会を開催できるようなところが選ばれると良いです。オプションで見学会(現地)があると討議が進むと思います。参加された方々の意識がそれぞれ大変高いもので、もっと意見交換したかったです。大人数で大変ですが、よろしくお願いいたします。
・また、多くの方々とお会いできることを楽しみにしています。

皆様の 熱いご支援とあたたかいご協力に 御礼申し上げます。
(くらしの足をみんなで考える全国フォーラム実行委員会事務局(せたがや移動ケア))

当日配布資料一覧

下記、資料名をクリックするとリンク先からPDFが閲覧できます。


くらしの足を考える全国フォーラム2017チラシ
0803tirasi_combine.pdf
PDFファイル 2.7 MB